なぜ理工系人材は、その重要性に比して、不遇なのか
理工系人材の不遇の理由は数多い。主なものを挙げる。
1.人が良い人が多い
理工系人材は、人が良い人が多い。不遇であるという視点を持たない人も多い。
2.理工系人材は、社会全体や理工系人材全体の地位向上に無関心な人が多い
理工系人材は、
社会全体の観点から理工系人材全体の地位向上が重要であるという視点を持たない人が多い。
それゆえ、理工系人材全体の価値が、一気に下がっていく。
理工系人材の不遇は、理工系人材全体の地位向上という視点に無関心であることによってもたらされている。
3.好きなことができればよいという思想が強い
理工系人材は、「好きなことができればそれでよい」という思想が強い。 自由に研究・開発等が行なえれば若いうちは良いかもしれない。しかし、社会の中で地位が低ければ
、実際には雑用をやらされたり、色々な制約を課せられる。さらに年齢が上がると、理工系人材の地位は厳しくなっていく傾向にある。好きなことができれば良いと考えて、社会の問題に無関心になれば、生涯にわたって低く処遇されるだけでなく、やがては好きなこともできなくなっていくのである。
4.特許の問題を軽視する
理工系人材の地位を向上するものは事実上、特許しかない。多くの理工系人材はこのことに気づいても、事の重要性を過小評価してしまう。
驚くべきことに、多くの理工系人材は、特許の著しく強い保護に反対する傾向が強い。よい発明は皆で分け合う方がよいというユートピア思想が強いからである。 特許に反対するユートピア思想が、どんなに悲惨な結果を理工系人材にもたらすのかを知らないのである。これは、
技術者・研究者自身の地位と待遇を決定的に押し下げ、日本の将来をも危うくするのである。
5.特許の保護が弱いので、理工系人材は会社に莫大な利益をもたらせない
ある人が莫大な利益を会社にもたらしている場合、その人の待遇も良くなる。プロ野球選手がよい例である。優れたプロ野球選手は球団に莫大な利益をもたらす。球団にとっては、「金の卵」なのである。よって、人の良い選手も、成績を残せば高い待遇が得られる。
しかし、日本では特許の保護が弱く、技術が莫大な富を生み出す度合いが、アメリカよりも相対的に低い。それゆえ、理工系人材は、莫大なお金を会社にもたらす「金の卵」とみなされることが難しくなっている。だから、会社にとっての価値が低くなってしまう。特許の保護が弱いために、理工系人材の地位が低くなってしまうのである。
6.技術者・研究者の価値を保護する者の地位向上が不十分である
本来、特許の専門家である弁理士等が、強力に理工系人材の価値を保護すべきである。しかし、特許の保護が弱いので、企業は特許の取得に十分な予算を与えない。企業の特許部門・知的財産部門自体が、「穀潰し」として、会社の中で冷遇されている例も多かったのである。そのため、
本来発明者の生んだ発明を育て上げる高度な専門職であるはずの弁理士が、単なる代書屋として安価に用いられる傾向が強くなるという危機的状況により、理工系人材を十分に守れない状況が生じているのである。